【サンガ番記者特別寄稿】サンガをみつめてきた担当記者がサンガの展望と見どころを分析

アクションサッカーの完成度をいかに高められるか。

川瀬太補 サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』京都サンガF.C.担当記者

17人もの新加入選手を迎え、大幅にメンバーが刷新された2016年の京都サンガF.C.。J1での経験が豊富な選手も多く、陣容は豪華さを増した。とはいえ、石丸清隆監督の言葉を借りれば「(昨季最終順位の)17位からのスタート」。指揮官は自分たちの力を過信せず、手綱をしっかり引き締めながら、6年ぶりのJ1復帰を目指す構えでいる。

始動から1ヶ月余りの時点で動きの良さが目に付くのが30歳オーバーのベテラン勢。トレーニングや練習試合で早くも存在感を示している新戦力の菅野孝憲、佐藤健太郎は、ともに31歳。最年長となった34歳の山瀬功治も状態が良さそうで、鹿児島キャンプ最終日には「あっという間であした」と充実ぶりを口にしている。32歳の石櫃洋祐も万全の様子。彼らがシーズンを通してコンディションを維持できれば、チームに安定感をもたらしてくれるだろう。

若手に目を向けると、著しい成長を見せているのがプロ3年目の石田雅俊。持ち味の足元の技術に加え、飛び出しやこぼれ球への反応などフィニッシュへの意識が高まり、練習試合でゴールを量産している。「まだ不安定さはあるが、能力的には十分やれる」と石丸監督も期待を寄せている。攻撃陣は、堀米勇輝が1月にひざを負傷して出遅れ、ダニエル・ロビーニョ、矢島卓郎はコンディションがなかなか整わず、コマ不足なのが現状で、若手にもシーズン序盤からチャンスが与えられるはず。田村亮介や沼大希ら、若い力のさらなる台頭にも期待したい。

システムは昨季終盤戦に用いた[4-3-3]にマイナーチェンジを加えた形を中心に練習を重ねているが、石丸監督は3バックの併用も視野に入れ、展開によってフレキシブルに布陣を変えることを目論んでいる。だが、システムに関わらずピッチ上で表現を目指すのは、“攻守ともに自分たちから仕掛けるアクションサッカー”。選手全員にハードワークを要求するこのサッカーの完成度をスムーズに高められるか否か。それが、今季の京都の命運を左右することになりそうだ。

【プロフィール】

広告制作会社勤務、G大阪オフィシャルモバイルサイトの原稿執筆などを経て、2015年9月からサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の京都サンガ担当記者に就く。京都U-18出身某選手の移籍が確実なことを知って帰りの電車の中で涙を流すなど、サンガ愛を日々増幅中。体重コントロールに大苦戦している四十路一年目です。

サンガに関わるすべての人たちが一丸となって復活の一年に。

雨堤 俊祐 サッカーライター

年々、激しさを増している明治安田生命J2リーグ。今年もさまざまなクラブ、さまざまな選手が、その争いに身を投じる。

昨季、思うような結果を残せずに悔しい思いをしたサンガは「攻撃でも守備でも、自分たちが主導権を握って戦う」という石丸清隆監督が思い描くチームを作るために多くの選手を入れ替えるなど、シーズンオフに活発な動きを見せた。多数の実力者が加わった今季に期待を寄せる人は多いが、チームの構築は一朝一夕でできるものではない。シーズンを通して、どのように成熟されていくのか注目したい。

覚悟を持って京都へやってきた選手がいる一方で、アカデミー育ちの生え抜き選手がクラブを去った。“サンガ愛”を持つ彼らが移籍を決意したことは、心情的にはこたえるものがあったが、冷静な目で見れば受け入れざるを得ないと思う。選手は自らの実力に見合ったチームでプレーすべきだ。厳しい戦いを経て成長した彼らは、京都サンガというクラブを追い越して新天地へと旅立った。逆に言えば、クラブも成長曲線を鈍化させずに結果を出していれば、共に歩み続ける未来があったはずだ。

今季のチームにも、可能性を秘めた選手たちがいる。彼らがチーム内の競争や実戦を通じて成長することを期待すると同時に、クラブはどのように進化していくのか。京都で育った選手が他クラブにも評価されたことは、育成型クラブとして一定の成果といえる。そうした強みを継承しつつ、トップチームの永続的な強化につなげるサイクルを作り出せるかどうかにも注目したい。

過去にサンガには転換期となるシーズンが何度かあった。願わくば2016年が復活のための一年となって欲しいし、それはチーム・クラブ・サポーターらサンガに関わるすべての人たちが一丸とならなければ実現しえない。今年もいよいよJリーグが開幕する。ピッチから発せられる喜怒哀楽を仲間たちと共有し、スタジアムを熱気で溢れさせよう。その先には、きっと明るい未来があるはずだ。

【プロフィール】

サッカーライター。Jリーグから育成年代まで、生まれ育った京都のサッカーシーンを日々追いかける。京都サンガとの出会いは、叔父に連れられて見に行った旧JFL時代の試合。以降、クラブの歩みに熱い視線を送っている。目下の悩みは盛岡体制2年目を迎える京都U-18などアカデミーとトップチームの試合日程の重複。

この記事をおすすめする人

【サンガ番記者特別寄稿】サンガをみつめてきた担当記者がサンガの展望と見どころを分析 写真

KYOTO eBOOKS編集部

京都府内の観光・情報誌や広報誌などを電子書籍にして、厳選された記事を読みやすくお届けします。