【ホームタウン対談】市長と一丸/第一回 京都市

2016明治安田生命J2リーグ開幕直後の3月4日、副キャプテン・山瀬功治選手が門川大作京都市長のもとを訪問し、開幕戦の結果報告をするとともに対談が実現。お互いの仕事観や京都市の魅力などについて和気あいあいと語り合いました。

市長もサッカー選手も、失敗を恐れず挑戦する気持ちが大切

山瀬▶先日、2016シーズンの開幕戦を迎えました。結果は残念ながら引き分けでしたが、去年より安定感が増したと手応えを感じています。あとはリーグ戦を戦いながら進化を続け、今年のスローガンにあるように、チームだけでなく、京都市民も含めた皆さんと「一丸」となってJ1昇格を目指していきたいと思っています。

門川▶開幕戦は残念ながら西京極で観戦できなかったのですが、サポーターの友人から逐一メールで試合経過を伝えてもらい、「あと少し耐えてくれ!」など、祈るような気持ちでいました。録画で試合を見た印象としては、ずいぶん粘り強いチームになったと感じています。

山瀬▶今年から西京極に大型カラービジョンが設置されたので、テンションが上がりました。僕たち選手も試合中にゴールや惜しい場面のリプレーを見て参考にすることが多いんです。開幕戦ではサンガがファーストゴールを決めたこともあり、ゴールシーンの映像にスタンドがすごく盛り上がっていました。

門川▶西京極は第1回の国体が開催された地であり、日本スポーツの聖地と言っても過言ではありません。今年度にはスタンドの防水工事やトイレの改修をします。さらに皆さまにより良い観戦環境を提供できるよう、計画的に進めます。

山瀬▶こういった西京極の整備も含めて、お仕事の中でさまざまな決断をしたり、計画を進めたりと、大変なお仕事が多いと思うのですが、なぜ市長を目指されたのですか?

門川▶もともと私は教育畑一筋でして、教育長を務めていた時に市会与党の先生方などから薦められるまでは市長になることを考えたことはありませんでした。歴代の市長が大変な苦労をされてきましたが、まさにそのとおりでしたね。財政の立て直しに加えて子育てや福祉をはじめ未来に向けた政策など、私が市長になって今年で9年目を迎えますが、ようやく土台ができつつあると感じられるようになってきたという段階です。山瀬選手は子どもの頃からプロサッカー選手を目指して頑張ってこられたのですか?

山瀬▶僕は物心がつく前からボールを蹴り始めて以来、サッカーを辞めたいと思ったことは一度もありませんでした。小学生時代にJリーグが発足してプロサッカー選手という具体的な目標が増えたこともあり、「このまま続けたらプロになるんだろうな」と思っていました。

門川▶すごい! なるべくしてプロになった。

山瀬▶もちろん、ここまで続けてこられたのも両親や指導者、ファン、サポーターやクラブ、奥さんなど周囲のサポートなしでは考えられません。自分ひとりにできることは知れていますから。それでもまずは自分が精一杯やることが大事。それは子どもの頃も今も変わっていません。その上で、プレーの中での決断、あるいは移籍といった大きな決断を経て、今の自分があります。僕の信条は「やるべきことをやった上で判断する」。決断した後で後悔だけはしたくないと思っているからです。

門川▶私も迷った時には「とことん迷う」。そして「あえて困難な道を選ぶ」。私が市長に立候補を決意した時がまさにそうでした。大変なことに挑戦して失敗しても、それは「教訓」にすることができる。逆に楽な道を選んで失敗すると「後悔」しか残らない。

山瀬▶「失敗は後退」と言う人もいますが、失敗から学べば、「前に進むためのプロセス」を歩むことになりますからね。

門川▶実にいい話。私も同意です。

仕事と生活を分けるよりも人生をまるごと楽しみたい

山瀬▶京都に来て4年目になりますけど、僕も京都の人と会って交流を深めるのが大好きになりました。例えば昔ながらの町家の佇まいを生かしたレストランで食事をすることも多いですよ。京都は「伝統」と「今」がうまく融合しています。先日、大文字山に登って京都の街を一望したのですが、歴史的な佇まいと近代的な機能が融合した街並みが放つ神々しいまでの雰囲気に見とれてしまいました。

門川▶京都の本質を的確に突いた素晴らしいご意見ですね。世界にある多くの歴史的な町は旧市街が城壁で囲まれ、新市街と分かれていて、京都のように新旧が融合している街並みは極めて珍しいですから。

山瀬▶京都に住むようになってからは、街に出かけることが勉強の場であったり新たな発見の場になりました。僕はサッカーとプライベートを切り離して考えることができないタイプなので、気分転換というわけにはいきませんが。市長は激務の合間に癒しを得たり、気力や活力を充電したくなった時は、何をされますか?

門川▶「人間浴」ですね。日光浴や森林浴で自然から力をもらうように、人間の力を浴びて元気をもらいます。京都最大の宝は「人」ですから、人の力を浴びられるところが最高のスポットですね。西京極で市民の皆さまと一緒にサンガを応援するのもそう。ただ、私も教育委員会勤務当時から、仕事とプライベートを分けて考えるというよりは、常に仕事のことが頭にあります。「仕事が趣味」というとつまらない人間のように思われるかもしれませんが、「仕事を楽しむ」のが私の基本。人生の最大の楽しみは仕事としたいですね。サッカーもワーカーとして取り組むのと、プレーヤーとしてやるのでは違ってくるはず。山瀬選手には、これからもここ京都でサッカーも生活も含めて、人生まるごとプレーヤーとして楽しんでいただきたいと思います。

普遍的な価値があるものは長い間受け継がれていく

山瀬▶門川市長はいつも着物をお召しになっていますが、特別な理由があるのですか?

門川▶着物は世界に誇る文化のひとつです。茶道や能、歌舞伎など、多くの伝統文化も着物が支えているので、大切にしたいと思っています。家では作務衣も着ているんですよ。今日はサンガの山瀬選手とお会いするので、紫色の羽織を着てきました。裏には広重が描いた三条大橋が染められているんですよ。

山瀬▶これは見事ですね!実は先日、京象嵌(ぞうがん)の工房を訪問して製作体験をしたんです。京都に来るまではなかなかこういう機会がなかったんですが、実際に接すると興味が湧いてくるものですね。やはり普遍的な素晴らしさがあるから長い間受け継がれてきたんだと実感しました。僕たちはもっと伝統について知らないともったいないですね。

門川▶次は着物の素晴らしさにぜひ触れてみてください。もし伝統産業に興味を持たれたのなら、ぜひみやこめっせの地下にある「伝統産業ふれあい館」にも足を運んでみてください。いつかサンガと伝統産業とのコラボレーションも実現するといいですね。

山瀬▶これからもぜひ京都でいろんなことを経験していきたいと思います。今日は京都についての新たな発見がひとつありました。、さっき市庁舎の前の敷地内で撮影していた時、子どもたちがボールを蹴ったりして遊んでいましたよね。ああいった光景は今まで見たことがありません。僕が子どもの頃は行政の施設に対して近寄りがたいイメージを持っていましたから。

門川▶庁舎前から響く子どもの声を聞きながら仕事をするのは全国的に珍しいかもしれませんね。素晴らしい環境だと胸を張りたいです。

山瀬▶今日、その光景を目の当たりにして、京都の未来は明るいと確信しました。そんな子どもたちのためにも頑張っていきたいです。この京都という素晴らしい街のさらなる発展や、そこに住む人を笑顔にするのが僕たちの使命であり、やりがいだと思っています。そのためにも、まずはJ1昇格に向けて一丸となり、必死になって戦っていきます。

門川▶サンガは京都の誇りであり、宝です。サンガができるまで、京都ではいろんな立場の人がひとつになって熱狂するということがなかなかありませんでした。サンガがより高みに登るのは市民の夢ですので、ぜひ実現してください。今シーズン、J1昇格が決まったら、感動の都大路パレードをしたいですね。

山瀬▶よろしくお願いします! 今日はお忙しいところありがとうございました。

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