年越しそばにいかが?京都府内の個性あふれる「ご当地そば」

今年もあっという間に師走ですね。少し気が早いかもしれませんが、今回は年末に食べる「年越しそば」に関するお話です。京都府内各地には、それぞれの特色を活かしたご当地そばがあるのをご存じですか? 全国的に知名度の高いものから、そば通のみが知る隠れたご当地そばまで、厳選4品をご紹介します!

海のない京都市でニシンが流通するようになった理由

「総本家にしんそば 松葉」のにしんそば


「京都のご当地そば」と聞いて、にしんそばを思いつく人は多いのではないでしょうか。昆布と薄口醤油を使った味付けのつゆにおそばに大きな身欠きニシンの甘露煮がのっているのが特徴です。でもよく考えてみたら、海がない京都市でにしんそばが食べられるなんて不思議ですよね。


北海道産のニシンが京都に流通するようになったのは江戸時代初期、北海道の南西部にある渡島(おしま)半島に松前藩が置かれた頃に始まります。当時、様々な特産物があったものの米の収穫がなく特殊な経済制度を敷いていた松前藩。そこに現れたのが、既に全国的なネットワークを築いていた近江商人たちです。彼らは、松前に出店を開き、ニシンや昆布、干しあわびといった産物を京都や大阪などで売りさばき、呉服物や米、味噌、醤油、漁具などを松前に運んで商いをしました。


こうした松前藩と近江商人たちとの通商は「松前渡海船」と呼ばれ、後に航路の延伸などにより「北前船」と呼ばれるようになりました。また、京都では寺院での行事食としてそばを取り入れていたところが多かったことから、うどん文化の関西の中でもそば文化が浸透したといわれています。


このようにニシンとそばを食べる文化が京都に根付いていたことにヒントを得て、「にしんそば」を考案したのが、1861年(文久元年)創業の老舗・松葉(現:総本家にしんそば松葉)です。2代目の松野与三吉さんが、にしんとそばの2つを組み合わせたにしんそばを販売。京都の人々に喜ばれ自然と他のそば店でも提供するようになり、今では京都のそばを語る上でに欠かせない逸品となりました。現在も、四条川端の南東角に本店を構え、京都の人はもちろん、たくさんの観光客も名物のにしんそばを楽しみに訪れています。


■■INFORMATION■■
総本家にしんそば 松葉
TEL:075-561-1451
住所:京都市東山区四条大橋東入ル川端町192
営業時間:11:00~20:30(LO20:15)
定休日:水・木曜日(祝日の場合は営業)※季節により変動あり


<公式HP>

www.sobamatsuba.co.jp



「お茶の京都」ならではのご当地そば

道の駅 お茶の京都 みなみやましろ村の食堂「つちのうぶ」で提供されている茶そば


鮮やかな緑色の麺に風味豊かな抹茶の香り、サッパリとした後味…。「お茶の京都」ならではの茶そばも、京都を代表するご当地そばのひとつですよね。


茶そばが食べられるようになったといわれるのが、江戸時代中期の頃。その誕生に大きく影響したのが、蕎麦殻を外し、胚乳の中心部分を挽いた一番粉で打つ更科そばの登場です。また、水よりも楽にそばを打てる湯ごねの技術が普及したことで作られるようになったのが、かわりそばの一種である「色物」。茶そばもこの色物のひとつで、更科の「白」や海老切りの「赤」と合わせて縁起物の「三色そば」として提供されていたとのこと。三色そばは、当時流行した「雛そば(※)」の行事が関係しているそうです。


現在、茶そばは、宇治市内をはじめ、府内にある数多くの飲食店で味わえます。そのうちのひとつ。道の駅お茶の京都 みなみやましろ村内にある食堂つちのうぶでは、上質な春摘みの抹茶をふんだんに使った茶そばが人気。身も心もポカポカになる「かけ」と暑い夏にぴったりの「ざる」、どちらも違った味わいを楽しめます。ほうじ茶の香りが豊かな茶飯のおにぎりとセットで味わえる村そば定食もおすすめです!


※雛そば…江戸時代中期から始まったといわれる行事食。ひな祭りの翌日、ひな人形を納めるときにそばを供える風習が庶民の間で広まった。年越しそばと同様に、寿命を伸ばし、家運を高めたいという思いが込められている。


■■INFORMATION■■
道の駅 お茶の京都 みなみやましろ村
TEL:0743-93-1392
住所:相楽郡南山城村北大河原殿田102
営業時間:9:00~18:00
食堂「つちのうぶ」
【モーニング】平日/ 8:00~10:00(LO9:30)、土日祝 / 7:30~10:00(LO 9:30)
【ランチ】11:00~16:00(LO15:30)
定休日:6月第3水曜日・12月第2水曜日


<公式HP>

michinoeki.kyoto.jp



こわーい鬼伝説が生んだ大江山名物のご当地そば

「大江山 鬼そば屋」の鬼そば


1000年以上前から「鬼の住み処」の伝説が伝わっている大江山。この周辺で150年以上食べられているのが鬼そばです。その発祥の地が、福知山市雲原。古くは参勤交代の際、宮津藩の殿様が雲原宿へ寄った際、どじょうの天ぷらとともに献上されたのが、この鬼そばだそうです。今上天皇が皇太子時代に献上したそばでもあります。でもどうして「鬼そば」と呼ばれるようになったのでしょうか。

昔から、硬いもののことを「こわい(強い)」と言っていた福知山。そばがとても太かったことから「こわい生(き)蕎麦」と呼ばれていました。この言葉を聞いた旅人が鬼伝説とつなげて「こわい生蕎麦」を「怖い鬼蕎麦」と勘違いし、いつしか「鬼(おに)そば」と呼ばれるようになったそうです。


手打ちでつくる鬼そばは、その麺の不揃いなところも大きな特徴。食べ応えも十分に感じられます。その伝統を今も続ける唯一の店雲原大江山 鬼そば屋は、幕末の安政時代に創業。現在は七代目が多彩な品々でおもてなしをしています。一番人気のメニューが、名物のとり天とダイコン天を2枚ずつ、それに日替わりの野菜天がついたなな天そば。手作りの塩麹で仕込んだとり天3枚がついたとり天そばも不動の人気を誇る逸品です。どちらもぜひご賞味あれ。


■■INFORMATION■■
雲原大江山 鬼そば屋
TEL:0773-36-0016
住所:京都府福知山市雲原1248
営業時間:11:00~15:00くらい
定休日:火・水曜定休(祝日は営業)


<公式HP>最新情報はFacebookで発信中!お店に行く前にぜひチェックしてください!

www.onisobaya.net



寒暖差の大きい高冷地が育てた香り豊かなご当地そば

野間産の自家栽培そば粉の打ち立てそばを、秘伝のつゆと自家栽培の本ワサビで楽しめる「野間亭」


京都府北部の京丹後市。丹後半島の自然豊かな空間は時間の流れもどこか緩やか。思わず深呼吸をしたくなります。そんな同市の中央部、旧弥栄町の野間地域で古くから食べられているのが野間そばです。


野間地域は、標高も高く雪深い土地で、昼の気温に対して夜の冷え込みが激しいことや肥沃な土と清らかな水がそばの栽培に適しています。香りが高く風味と舌触りが楽しめる野間そばは、主に祝い事や節目のごちそうとして食されていました。


現在、同地区内にある野間亭で自家製麺のそばを味わうことができます。知名度は決して高くありませんが、足を伸ばしてでも食べたい京都のご当地そばです。


■■INFOROMATION■■
野間亭
TEL:0772-66-0701
住所:京丹後市弥栄町野中2448-1
営業時間:11:00~16:00
定休日:火曜


<公式HP>

www7.plala.or.jp