【Vol.45-巻頭特集】Second Season(後編)

大学時代からの盟友とともに同じサンガでプロに。Jリーグの世界では稀なシチュエーションを体験したふたりの選手がルーキーイヤーに感じたこと、そして2年目のシーズンに懸ける思いを語り合う。

自分との戦いに苦しんだ、それぞれのルーキーイヤー

内田:サンガでの1年目はとにかく試合に早く絡みたかった。最低でもベンチには入りたいと思っていたら開幕戦からベンチに入ることができた。そして、思ったより早くデビューのチャンスがめぐってきて、初先発の第5節・コンサドーレ札幌戦ではアシストも決めて勝つこともできた。入りとしては自信を持つこともできたし、いいスタートだったと思う。

和田:最初の年は正直言って精神的にかなりしんどかった。技術的にはそれなりの自信があったし、プロの世界でも慣れてくれば自分が得意としていた「周りを活かすプレー」をそれなりにできるという自信はあった。でも、親父(和田昌裕)が監督ということがこれほどまで難しいとは思ってもいなかった。親父は自分のことを一選手として見ていてくれていたと思うし、自分も意識せずにやっていこうと思っていたけど、いざシーズンが始まってみれば、難しかった。そして周りも「和田監督の息子」という目で自分のことを見ているんだろうなぁと勝手に思い込んでしまうようになっていった。そんな精神的な要素が影響して大学時代のように伸び伸びとプレーできなくなってしまっていたし、自信もどんどん失っていった。

内田:オレもスタートは良かったけど、その後は目に見える結果を出し続けることはできなかったし、スタメンを外れてはまたチャンスが巡ってきたりの繰り返しで、特に勝利に貢献するようなプレーもできなかった。シーズンをトータルで見ると納得できるシーズンだったとは言えない。チームの成績も良くなくてJ2残留争いに巻き込まれたけど、それよりも自分が試合に出ることに必死だったし、むしろ自分のパフォーマンスが不安定だったことを反省すべきシーズンだった。

和田:シーズン途中で監督がマルさん(石丸清隆監督)に変わって、気持ちが楽になる部分はあった。でも、これからという時にケガをしてしまい、苦しんでいるチームに何の貢献もできなかった。「うまくいかないもんだな」というのがプロになって1年目の感想かな。

プロ2年目は課題を克服して、チームの勝利に貢献する活躍を! 

和田:ウッチーは大学時代、左サイドバックをやったこともあったけど、基本的には右サイドバックに定着してたよね。でもサンガに入ってからは左サイドバックとして出ることが多くなったけど、右と左ではプレーしてて感覚は違う?

内田:大学時代に右サイドでプレーしてたことが多かった分、右の方が攻撃参加のタイミングはとりやすい。でも、ボールを持つのは左の方がやりやすいから、ポゼッションをしたり、ゲームをつくったりするのは左の方がしっくりくるかな? 右も左もそれぞれの良さがある。

和田:今年でプロ2年目になるけど、どんなシーズンにしたいと思う?

内田:去年20試合に出ることができて技術的にはついていけるという自信はある程度できた。ただ、去年は自分の中で調子の波があって、プレーにムラがあった。やっぱりシーズンを通して安定したプレーをできるようにしないと、監督も起用しにくいと思う。特に安定感が要求されるディフェンダーの一員としては。だからメンタル面をなんとか改善したい。

和田:メンタルっていうか、集中力!(笑)

内田:ぶっちゃけ、そう(苦笑)。マルさんにも練習試合の後、「オマエ、あの場面から切れてたやろ?」と言われることがある。見た感じはクールと言われることがあるし、自分もそれなりに考えながらプレーしているつもりだけど、感情の切り替えがまだまだ。マッチアップの時に相手にガツガツこられてもそんなに頭にくることはないけど、自分のプレーに納得がいかない時にプッツリ集中が切れてしまうことがまだまだある。ビツさん(石櫃洋祐)は、そういった時の気持ちの切り替えがメチャ上手いので、見習っていかないと。

和田:今年は去年のようなプレッシャーがなくなった分、伸び伸びとできてる。精神的にもタフになったと思う。だから今年は新たなスタートだと思って、まずは試合に出るのを目標にしたい。何度かベンチには入ることができているので、あと一歩。監督からは球際の強さが求められているので、そこを改善して守備の課題を克服できればきっとチャンスはあると思う。

内田:今シーズンはチームもいい順位につけているし、雰囲気もいい。スゲさん(菅野孝憲)、やソメくん(染谷悠太)らベテランが常に声を出してくれているし、若手のユウジ(高橋祐治)やタム(田村亮介)も元気がある。

和田:セルさん(エスクデロ競飛王)も。

内田:今年は選手の年代が偏ってないし、みんなが盛り上げようとしているのがいい。

和田:あと、今年はテクニックを持ってる選手が増えた。去年は裏に蹴るかドリブルで仕掛けるパターンが多かったけど、今年はそれに加えてパスやコンビネーションで崩すことができている。ボールを預ければ何かをやってくれるので、ボールの出し手である自分としてはやりやすいし、コンビネーションで崩すなど、まだまだ攻撃のバリエーションは増やせるはず。攻撃が自分の持ち味なので、いかに前にボールをつけて、周りの選手に攻撃させてあげるかをもっと追求していきたい。

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内田:今年はファン、サポーターとの一体感もあって、一緒に戦っていることを常に実感できている。リーグ前半は個人的には納得できなかったけど、後半はもっとチームの勝利に貢献しないと。

和田:これからできるだけ多くの試合に絡んで、ピッチに立てばしっかり自分の特徴を出し、自分がこういう選手なんだというのをファン、サポーターのみんなに知ってもらって、応援してもらえるようになりたい。

プロフィール:和田 篤紀

和田 篤紀 WADA Atsuki

1993年2月9日生まれ。兵庫県出身。ヴィッセル神戸ジュニアユース、ヴィッセル神戸ユースを経て関西大学サッカー部で司令塔としてプレー。大学卒業後の2015年、サンガに加入。チーム屈指のボールコントロールやパスの精度を持つテクニシャン。昨シーズンはリーグ戦9試合に出場した。弟・倫季も光州FC(韓国)でプレーするプロサッカー選手。

プロフィール:内田 恭兵

内田 恭兵 UCHIDA Kyohei

1992年11月5日生まれ。静岡県出身。ジュビロ磐田ユース、関西大学サッカー部を経て昨シーズン、サンガに加入。サイドバックなら左右どちらでもこなせる貴重な存在。昨年の第5節・コンサドーレ札幌戦ではスピードに乗ったドリブルからクロスボールを供給し、決勝点をアシスト。記念すべきプロデビュー戦を自ら勝利で飾った。

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